逆サラ30代 透析ライフ

既婚、子持ち、30代、腎臓病、腎不全、透析、腎移植、闘病からの目指せハッピーライフ日記!!

尿道さん

この入院で何人か友達が出来た。

 

男2人に女1人。

それぞれ紹介します。

 

Kさん

同じ部屋で初めて話しかけてくれた人。僕が首に太い管(カテーテル)をぶら下げてたもんだから「それって痛いですか?」と、渋谷のピーポーがやっと寝静まる早朝5時あたりに朝日の光で無くなりそうな薄暗い影から慌てながら様子をうかがう巨大ネズミのような表情でKさんは僕に興味の言葉をかけてくれた。(村上龍風に)

僕はとっさに、今まで接客業で培ってきた笑顔を思い出しながら最近固まっていた表情筋を奮い立たせるように口角を上げ「痛くないんですよ。」と愛想の波長をそのKさんに合わせた。

そこから会釈を重ねながら徐々に僕もKさんに心のシャッターを開き始めた。

僕の性格は割と社交的だ。

ただ警戒心MAXを100に換算すると70の段階でそのシャッターを上げるか下げるかの判断をする。大抵の人もそうだろうが、僕の場合はその判断がハッキリすると下げるも上げるもそのスピードが早い。

Kさんには60の段階で一気にシャッターを上げた。

 

Kさんがここにいる理由は脳梗塞

しかも、2度目らしい。

ジムで汗を流している最中に目の前が真っ暗になり気付いたら病院にいたんだと。職業はバスの運転手なので、仕事中じゃなくてよかったと笑ってた。僕は笑えなかった。

趣味はサッカーでポジションはGK。

娯楽でサッカーをやっていると、なかなかGK出身の人は珍しくフットサルなどでも必然的に重宝される。本人もそれをわかってるらしく「色んなチームから呼ばれて人気者なんですよー」と。

そんな事よりハゲとるやないか!!

と関西の人気漫才師のようにツッコミを入れたかったが僕は社会人なので、少し勝手にニヤけて「すごいですね。」と相槌を打った。彼は少し人気者の意味を履き違えてるらしい。

とても気さくでなんでも話してくれた。

先端恐怖症だから、点滴で暴れた話。

この前、チャリで近くの星乃珈琲店まで爆走した話。

嫁との馴れ初めの話。

Kさんのシャッターは誰に対しても開きっぱなしなんだろう。

たまに現れる「いいヤツ」って奴。

ちなみに8歳上の年上です。笑

 そんなKさんは、脳の左側の血流が悪くその血流を良くするために股間の近くの血管から管(カテーテル)を入れて脳まで届かせ血流を促進させる手術の準備をしていた。その準備とは、

術後は1日絶対安静の為トイレに行けないので尿道カテーテルを入れる排泄方法だ。「尿道カテーテルを入れた事ありますか?」と泣きっ面に蜂な状態で質問されたので僕は、満面のニヤけ面で「あるわけないじゃないですか!」と関東の人気コント師のようなツッコミを入れた。

その話から僕はKさんに親しみを込めて「尿道さん」と呼ぶようにした。

僕のニックネームを付けるセンスは小学生の時から定評を頂いている。

 

うーん、

 

尿道さんの紹介でだいぶブログの尺をとられてしまったので残りの2人は足早に紹介しよう。

 

Oさん

通称、BOSS。このニックネームは尿道さん(以下Nさん) が元々呼んでいたので僕もそれに従ったカタチだ。

BOSSは神経異常とのことでなんと今回は7回目の入院なんだと。

んーーー、、BOSS!!

直接的な異常の原因はわからず投薬療法で良い時と悪い時のサイクルを見極めているんだと。確かにBOSSの口元は若干だが呂律が回っていない。

結婚していて、娘さんが3歳の頃にBOSSが自宅を出てそのまま1人でいるんだと。

えっ、なんで?と話を広げようとはしなかった。僕のシャッターは80の段階で閉店ガラガラ。

 歳は恐らく50寄りだが、見た目は若くしてるがまあ、陸サーファー風なオッサンだ。

僕のいる部屋は8人部屋で、窓際の特等席はそのNさんとBOSSが牛耳ってる。

いつもその2人の会話が筒抜けで聞こえてくる。大体は看護師へのセクハラだ。笑

BOSSは1人の看護師とLINEを交わしているらしい。その意外にも永続的なLINEのやりとりを僕に自慢気に見せてきた。「結構カマちょで厄介だよー。」って鼻の下15cmくらい伸ばしながら。

ちなみにカマちょと言うのは、かまってちゃんの意で若者言葉である。僕のシャッターは閉じたままだ。

ただ一つ、BOSSはキレていた。

8人部屋は満床で毎日それぞれの見舞客が面会に来ていて、その部屋にいれば嫌でも色んな会話が耳に届く。

「昨日の誰かわかんないけど見舞客の会話聞いてた?」と、歯磨き中の僕にBOSSから声が掛かった。

 ヒヤ?ととぼけながら何があったか聞いてみた。

「いやさあ、どこぞの見舞客がたぶん親族だと思うんだけど、透析はやめた方がいいとか、元気出せとか、なんも病気の辛さも知らねーでスゲー無責任な励ましをバカみたいなデケー声で話してたから隣にも透析がんばってる患者がいるし、本当デリカシーねーなーって思って

イライラしてお前に何がわかんだ!てキレる寸前だったんだよ。」ってゴッドファーザーでマーロンブロンドが演じたドンクロレオーネのような喋り口調で言われた。

僕は、磨いていた歯ブラシを口から外し急いで歯磨き粉をゆすいだ後に閉じていたシャッターを全開にした。

 ごもっとも。BOSSのパッションが僕のシャッターを開けたのだ。

 

3人目は女の子のHちゃん。

聞いたら高校生らしい。

その子は、夜な夜なフロアの共有ロビーで何かをしていた。覗いてみると切り絵をしている。さらに覗いてみると、ドナルドダックとデイジーが手を繋いで楽しそうに踊ってる絵。一瞬ドローイングに見えたが完成は崇高な切り絵だった。

一つの才能を見つけてしまったような感覚。ディズニーが大好きで早くランドとシーに行きたいと語られた。

「でもいつ行けるかはわかんないんだ」って。その理由は僕にもすぐわかっていた。なぜなら彼女はそのロビーの机に対して床にベタで座り彼女の横には車椅子が佇んでいたから。

「お兄さんはどうしちゃったの?」

「腎不全だよ。」

「じゃあ、私と一緒だね。でも私は腎臓に免疫が攻撃しちゃって他も悪くなって左足が動かないんだ。もうずっと動かないんだって、私ここに1年いるんだ。前まではソフトボールをやっててこう見えて運動神経はいいのよ。でももうソフトボールも出来ないけどね。」そう言って笑顔で中学時代の友達との笑顔の2ショットを携帯から見せてくれた。

僕も、へーかわいい!!と頑張って明るく振る舞った。そんなエピソードに質問の余地はない。

「お兄さんの首のカテーテルは抜いても痛くないよ。私もやってたからわかるんだ。」「あと、ここのベーコンポテトが美味しいよ。明後日出てくるから食べてみて。」「なんでも聞いてね。私ここに1年いるから、あー病院の中にローソン以外のコンビニ出来ないかな。私ファミマが好きなの。」

 当然、質問する気はない。僕より一枚も二枚も上手だ。

次の日、彼女は小指程もない小さな折り鶴のストラップをくれた。

 赤、青、黄、緑、紫、ピンク

「お兄さんはどれがいい?緑っぽいから緑あげるね、はい。」

僕は、緑を選ぼうとしていた最中だった。

 

 んーー、、師匠!!

 

そう心の中で叫んだ。

 

安易な言葉かもしれないけど、辛いのは自分だけじゃない。むしろ、自分より辛い人はいっぱいいる。病院にいて得た感情が確かな物になった。きっとみんなそう思って笑顔でいるんだなって。会話が助け合いになるんだなって。

 

この病気になるまで、医者の事は全然信じてなかった。

自分の身体なんだから自分が一番わかるはずスタンスで。

でも、今回は自覚症状がなく気付いたら取り返しがついていない。

あの時にあーしてればという後悔はしないようにしてるが、今回の反省点は自分に関わる人達にはこれから口すっぱく伝えていこうと思う。

 

まずは、自分のデータを残しておく事。健康診断の検査結果が「健康」となればそれでいいじゃない。そこで何か見つかればもっといいじゃない。

 

僕は今までの健康にかまけて何も残してなかった。だから主治医も困っていた。

 

そして、腎生検の結果が出た。