陰性
今日は何の日?
腎生検の結果発表の日。
透析のルーティンはしっかり出来上がり、2つの病院を駆使してなるべく負担がないように出来ている。
職場の理解を頂き、
月・水・金の透析リズムに合わせて。
毎週月曜日はお休みにしてもらい、自宅の近くにある透析クリニックへ通い、水・金は仕事帰りに初めに入院していた夜間透析をしている病院へ。
今出来る最も理想的な形だ。
1つの同じ病院に週3で通うのがセオリーなのだが、自宅近くのクリニックに週1でも可能か?と尋ねたところ事情を理解していただき無理なお願いを快く承諾してくれた。
捨てる神がいれば、拾う神もいるってわけ。
そのクリニックの親切な室長さんは、僕が通っているもう一方の夜間透析に興味が強いらしい。
「うちのクリニックはまだ出来て3年程の新しい透析クリニックなのでまだノウハウが浅い。まだ患者は少ないけどいずれは夜間もやっていきたいと思っています。そうすればもっと協力できる。」
・夜間の雇用形態は?
・何人体制?
・バイトも雇ってるのか?
・毎日夜間もやっているのか?
知らん!!笑
僕はただの一透析患者ですので。
その室長は今度見学に行ってみると言って去って行った。
気さくで親切な人だ。
何もわからない者に対してその人の立場になって話してくれる人は親切な人だ。この病気になってから色んな親切を感じている。自分ももっと人の痛みがわかる人間になりたいし、なれるはず。
これは、成長だ。
話を戻そう。
今日は何の日?
腎生検結果発表の日。
今日、せっかく久しぶりに主治医に会うので質問を用意した。
・腎移植するならどこがいいか?
・移植後の職場復帰のスケジュール
・娘への遺伝の可能性は。
どれも Big deal.
僕の中では大きな取り引きだ。
まずは結果発表、、
「わからない」
新喜劇ばりの大ズッコケ〜
腎生検で採取した細胞は三箇所。
どれも壊滅的に細胞は死んでいるとのこと。
例えて言うなら「焼野原状態」だと。
火事に置き換えると、全焼してしまったあとなので火元がどこか、どのように燃え広がったのか、なんで燃えたのか。全く証拠が残っていない為に原因を突き止められないんだと。
まあまあ分かりやすい例え話。
ここまで来ると何を言われても動じない。僕は鋼のメンタルを手に入れたのだ。
これから周りには、
僕の腎臓は焼野原なんです。と、説明しよう。つかみはバッチリなはずだ。
全国にいる腎臓内科の先生の中でも腎生検をみれる先生は限られているらしい。主治医の出来る限りの範囲で色んな先生に僕の細胞をみてもらうように今後も頼んでいくと言ってくれた。
親切な主治医だ。
僕の主治医はイケメン。
若いし、身長は180くらいでスタイルも良い。フェイスは華丸大吉の大吉先生みたいなシュッとした感じで学生の時はアメフト部でキャプテンやってました。的な爽やかな前分けな雰囲気だ。
勘違いしないでほしい。「的な雰囲気だということ。」
口数は多くを語らず、シャイな感じが更に好感をあげてくれる。ただこちらが質問を用意していないと問診はサラッと終わってしまうのは要注意。
Q1腎移植をするのは、東京女子医大を考えている。先日、姉が北里大学病院のセミナーに参加した。その際に、先生はもちろんチームとしてとても良い雰囲気を感じた。そこはどうか?
A.北里大学の先生は学会で何度か会っている。チームとして優れているので良いチョイスだろう。ただ、女子医大の年間症例数は圧倒的に多い。その他はトントン。
心配すべきは術後の通院。腎移植は他の病気に比べてハードルが一気に上がる。具合が悪くなった場合、みれる病院が相当限られるので手術する病院は通いやすい場所がベストだ。と。
Q2 NETで調べると、術後は様々な感染症にかかるリスクが高いために3〜4ヶ月は人前に出てはいけないとなっているが本当か?
A. 担当医によるが、早くて1週間で退院する人もいる。そこから1ヶ月程で復帰している。ただそれは術後の判断になるからあまり焦らないでほしい。半年〜1年までが色々とリスキーな期間なのでそこを頑張って乗り切りましょう。
Q3 娘の遺伝は…?
A. 陰性。心配無用。
よかった。
取り急ぎ、一番心配していた嫁に娘への陰性結果をLINEで報告。
よかったよかった。
さて、着々とゴールに向かっている。
次は、紹介状を受け取り次第女子医大へ移植の予約だ。
ドナーの腎臓が正常か、そして医学的に移植が可能なのか。次の心配事が決まった。
病院から帰宅し改めて嫁に主治医と話した内容を報告していたら、嫁が1つ聞いて欲しい事があったと仰せ。
「先生は結婚してるのかな?」
敬愛なるJohn Lennon、
我が家は今日も平和です。
IPS細胞
今日は何の日?
敬愛なるJohn Lennonの命日。
そんな事もあって、NHKのクローズアップ現代という番組では「John Lennon特集」だった。
見逃すべく、テレビの視聴予約をセットしていたのにそれを忘れて寝床に着いた。寝静まった頃に勝手にテレビが着いてテレビが勝手に喋り出した。
寝ぼけながらも連呼される「ジョンレノン」というワードに飛び上がり映像に入り込んだ。
時間は30分。
身のなる30分だった。
なんでも、ジョン没後も未公開だった映像や写真が40枚も公開されたんだと。その中には音源もあってタイトルは「Give peace a chance」平和を願う歌だ。
学生の頃に「PEACE BED」というJohn Lennonのドキュメンタリー映画を観たことを思い出した。
オノヨーコとベッドの上で平和を願う話だ。当時はあまりよく分からずただJohn Lennonの情報を集めていた頃。
今、やっとわかった。
戦争なんていかず、今このベッドの上で愛を叫ぼうという事なのだ。
人によっては綺麗事だと批判の対象でも、僕にとってはすごく染みるパフォーマンス。
ジョンからの時系列でいくと、
日本では3.11、北朝鮮のミサイル問題がプラスされる。
テロが乱行しているこの時代で平和ボケが出来ているのは日本くらいなんじゃないかな。
それはすごくいい事で尊い事だと思う。
それも、先人が戦争を放棄してくれたおかげであって白州次郎に大感謝するべきなのだ。マッカーサーが日本に降り立ったあの時に、白州次郎が叱責しなければ日本は完全にアメリカの植民地だったから。
現代、海外での避難訓練は当たり前の様にテロ対策が組まれている。
日本でもそうするべきだという意見は、僕も半分賛成、半分反対。
なぜなら、訓練に組み込むという事はテロを認めテロを受け入れる現実が目の前にあるから。
逃げるんじゃなくて戦うんでもない。
「想像する。」
imagine all the people
living life in peace...
敬愛なるジョン様はそう謳っている。
ジョンがなぜ撃たれたのか、
なぜ今まで非公開の情報がこんなにあったのか。
ジョンの影響力はあまりにも大き過ぎるし、あまりにも浸透していないのだ。
「本来、imagineという曲の意味を辿れば色褪せるべき歌なんだ。今もこうやって定期的に提示されるということはまだジョンの想像するPEACE(平和)は来ていないんだ。」と。
僕のPEACEはやはり家族が幸せでいること。その為にはもちろん自分もHAPPYでいなくてはいけない。
FNNニュースでHAPPYな事を言っていた。慈恵大の研究グループが腎機能回復のマウス実験を成功したと言うのだ。
これは透析患者にとってはスーパーウルトラミラクルビッグニュースだ。
腎機能を失った人間の従来の選択肢は
2つ。
透析 or 腎移植
IPS細胞の治療法が発展すれば絶対的な選択肢が1つ増えるわけだ。
日が経つにつれ移植ができるありがたさと尊さを感じている。
ただ、不安もある。
せっかく移植で生着した腎臓がまた悪くなる可能性は大。
「腎臓は回復しない。」
そんな常識が近い未来、馬鹿にされる事になるのか。否か。
是非、5年後くらいには馬鹿話になっていることを想像しよう。
ジョンレノン?
ああ、あの丸メガネの人でしょ?
オノヨーコ?
うん、聞いたことある。
そうじゃない。
西洋の男と東洋の女が愛し合いそこに生まれた平和をみんなで共鳴しようじゃないか。
ジョンはヨーコに出会って変わったのだ。ジョンの歌詞はヨーコの影響なのだ。
透析中のベッドの上でそんなPEACEをimagineしている。
穿刺
退院してから結構贅沢してしまっている。
先日は、午前中に近所の役所で行われるバザーと親睦会に家族で参加してランチには最近発見した近所のお洒落なトラットリアに初挑戦。
頼んだのはランチBセット¥1480-
・新鮮な地元野菜のサラダバー
・フレッシュジュースを含むドリンクバー
・バケット
・赤肉鳥もものコンフィ
クオリティとしては、
これが代官山のランチだったら¥2500-はいくレベルだった。
まあ、透析患者にとって生野菜とフルーツ(ジュース含む)は大敵なのでけん制球。その中でカリフラワーは茹でて
あったのでパクリ。
熱々でカリフワなバケットはオリーブオイルを少しだけ付けてパクリ。
ドリンクバーのコーヒーはドリップなのでゴクリ。
メインのコンフィは、、、
ボリューム満点な骨付きの肉量に表面は繊細な焼き目でカリッと仕上げ、ほのかに酸味の効いたバルサミコソースがまた無理矢理寝かせている食欲をおこしにかかる。
ディッシュサイドに飾られたカリウムが豊富なポテートは嫁に譲り、食べすぎないようにコンフィ肉も多めに譲る。
そしてペロリ。
骨の髄までシャブリ尽くす勢いでペロリ。
というように食事制限には気を使いながらも少し遅めの食欲の秋を楽しんでしまっている。
それもこれも、透析の穿刺が痛いせいだ。
入院中はカテーテルで透析していて穿刺の痛みを知らなかった。透析用の針はミシン針程の太さでそれを毎回2箇所にブスブスっと刺す。
慣れてきて環境にリラックスしている分、痛みが強調される。
なので、看護師さんから局部麻酔テープという画期的な代物をいただいた。透析開始1時間前に貼っておくと痛みが緩和するんだと。
そいつぁいいや!と、穿刺を楽しみに待つ。
ブス!
おっ!
2発目ブス!
おー!!
痛っ!
そるぁないぜー。
穿刺が痛いのはもう受け入れるしかない。ただそのストレスのはけ口が食欲に上乗せされる。穿刺に耐えてる分ちょっとだけ。。いいよね?
犯罪に手を染める一歩手前の状況だ。
嫁はすごく心配してくれている。
お弁当や夜ご飯の食事制限にすごく気を張ってくれている。
その気持ちを踏みにじってはダメだ!
きっと穿刺が痛くなかったら違う理由を探しているだろうから、
これは穿刺を言い訳にしている僕の弱さだ。
でも、前にも言ったけど味覚が退院してから上がっている。というよりは戻ったんだろう。
食べるもの全てが今までの3.5倍も美味しく感じる。
食欲をとるか、
命をとるか。
がんばります。
糸球体腎炎
退院した。
ということはこのブログを熟読していただいてる方ならお察しつくハズ。
腎生検の結果が完全に出るにはあと1ヶ月くらいかかるらしいが、今の段階で病名を断定するなら「慢性糸球体腎炎」
腎不全という大きなカテゴリの中のディテール名がそれということだ。
僕の中の免疫君がなんでか大事な腎臓さんをいじめてるんだと。
これが急性だったら、ステロイドなどで治療法があるんだが、もうそれでは対応できないレベル。
よって継続的な透析治療が必須になりました。
想定内。
これでまた予想していない病気が発見されたら怖かったのでとりあえずよかった。
次の目標は「腎移植」
まずは、日常生活の感覚を取り戻そう。
なんだかんだ2週間で退院できると思ってたら丸々1ヶ月掛かったから。
今日はそのRE:STARTの出勤日です。
尿道さん
この入院で何人か友達が出来た。
男2人に女1人。
それぞれ紹介します。
Kさん
同じ部屋で初めて話しかけてくれた人。僕が首に太い管(カテーテル)をぶら下げてたもんだから「それって痛いですか?」と、渋谷のピーポーがやっと寝静まる早朝5時あたりに朝日の光で無くなりそうな薄暗い影から慌てながら様子をうかがう巨大ネズミのような表情でKさんは僕に興味の言葉をかけてくれた。(村上龍風に)
僕はとっさに、今まで接客業で培ってきた笑顔を思い出しながら最近固まっていた表情筋を奮い立たせるように口角を上げ「痛くないんですよ。」と愛想の波長をそのKさんに合わせた。
そこから会釈を重ねながら徐々に僕もKさんに心のシャッターを開き始めた。
僕の性格は割と社交的だ。
ただ警戒心MAXを100に換算すると70の段階でそのシャッターを上げるか下げるかの判断をする。大抵の人もそうだろうが、僕の場合はその判断がハッキリすると下げるも上げるもそのスピードが早い。
Kさんには60の段階で一気にシャッターを上げた。
Kさんがここにいる理由は脳梗塞。
しかも、2度目らしい。
ジムで汗を流している最中に目の前が真っ暗になり気付いたら病院にいたんだと。職業はバスの運転手なので、仕事中じゃなくてよかったと笑ってた。僕は笑えなかった。
趣味はサッカーでポジションはGK。
娯楽でサッカーをやっていると、なかなかGK出身の人は珍しくフットサルなどでも必然的に重宝される。本人もそれをわかってるらしく「色んなチームから呼ばれて人気者なんですよー」と。
そんな事よりハゲとるやないか!!
と関西の人気漫才師のようにツッコミを入れたかったが僕は社会人なので、少し勝手にニヤけて「すごいですね。」と相槌を打った。彼は少し人気者の意味を履き違えてるらしい。
とても気さくでなんでも話してくれた。
先端恐怖症だから、点滴で暴れた話。
この前、チャリで近くの星乃珈琲店まで爆走した話。
嫁との馴れ初めの話。
Kさんのシャッターは誰に対しても開きっぱなしなんだろう。
たまに現れる「いいヤツ」って奴。
ちなみに8歳上の年上です。笑
そんなKさんは、脳の左側の血流が悪くその血流を良くするために股間の近くの血管から管(カテーテル)を入れて脳まで届かせ血流を促進させる手術の準備をしていた。その準備とは、
術後は1日絶対安静の為トイレに行けないので尿道にカテーテルを入れる排泄方法だ。「尿道にカテーテルを入れた事ありますか?」と泣きっ面に蜂な状態で質問されたので僕は、満面のニヤけ面で「あるわけないじゃないですか!」と関東の人気コント師のようなツッコミを入れた。
その話から僕はKさんに親しみを込めて「尿道さん」と呼ぶようにした。
僕のニックネームを付けるセンスは小学生の時から定評を頂いている。
うーん、
尿道さんの紹介でだいぶブログの尺をとられてしまったので残りの2人は足早に紹介しよう。
Oさん
通称、BOSS。このニックネームは尿道さん(以下Nさん) が元々呼んでいたので僕もそれに従ったカタチだ。
BOSSは神経異常とのことでなんと今回は7回目の入院なんだと。
んーーー、、BOSS!!
直接的な異常の原因はわからず投薬療法で良い時と悪い時のサイクルを見極めているんだと。確かにBOSSの口元は若干だが呂律が回っていない。
結婚していて、娘さんが3歳の頃にBOSSが自宅を出てそのまま1人でいるんだと。
えっ、なんで?と話を広げようとはしなかった。僕のシャッターは80の段階で閉店ガラガラ。
歳は恐らく50寄りだが、見た目は若くしてるがまあ、陸サーファー風なオッサンだ。
僕のいる部屋は8人部屋で、窓際の特等席はそのNさんとBOSSが牛耳ってる。
いつもその2人の会話が筒抜けで聞こえてくる。大体は看護師へのセクハラだ。笑
BOSSは1人の看護師とLINEを交わしているらしい。その意外にも永続的なLINEのやりとりを僕に自慢気に見せてきた。「結構カマちょで厄介だよー。」って鼻の下15cmくらい伸ばしながら。
ちなみにカマちょと言うのは、かまってちゃんの意で若者言葉である。僕のシャッターは閉じたままだ。
ただ一つ、BOSSはキレていた。
8人部屋は満床で毎日それぞれの見舞客が面会に来ていて、その部屋にいれば嫌でも色んな会話が耳に届く。
「昨日の誰かわかんないけど見舞客の会話聞いてた?」と、歯磨き中の僕にBOSSから声が掛かった。
ヒヤ?ととぼけながら何があったか聞いてみた。
「いやさあ、どこぞの見舞客がたぶん親族だと思うんだけど、透析はやめた方がいいとか、元気出せとか、なんも病気の辛さも知らねーでスゲー無責任な励ましをバカみたいなデケー声で話してたから隣にも透析がんばってる患者がいるし、本当デリカシーねーなーって思って
イライラしてお前に何がわかんだ!てキレる寸前だったんだよ。」ってゴッドファーザーでマーロンブロンドが演じたドンクロレオーネのような喋り口調で言われた。
僕は、磨いていた歯ブラシを口から外し急いで歯磨き粉をゆすいだ後に閉じていたシャッターを全開にした。
ごもっとも。BOSSのパッションが僕のシャッターを開けたのだ。
3人目は女の子のHちゃん。
聞いたら高校生らしい。
その子は、夜な夜なフロアの共有ロビーで何かをしていた。覗いてみると切り絵をしている。さらに覗いてみると、ドナルドダックとデイジーが手を繋いで楽しそうに踊ってる絵。一瞬ドローイングに見えたが完成は崇高な切り絵だった。
一つの才能を見つけてしまったような感覚。ディズニーが大好きで早くランドとシーに行きたいと語られた。
「でもいつ行けるかはわかんないんだ」って。その理由は僕にもすぐわかっていた。なぜなら彼女はそのロビーの机に対して床にベタで座り彼女の横には車椅子が佇んでいたから。
「お兄さんはどうしちゃったの?」
「腎不全だよ。」
「じゃあ、私と一緒だね。でも私は腎臓に免疫が攻撃しちゃって他も悪くなって左足が動かないんだ。もうずっと動かないんだって、私ここに1年いるんだ。前まではソフトボールをやっててこう見えて運動神経はいいのよ。でももうソフトボールも出来ないけどね。」そう言って笑顔で中学時代の友達との笑顔の2ショットを携帯から見せてくれた。
僕も、へーかわいい!!と頑張って明るく振る舞った。そんなエピソードに質問の余地はない。
「お兄さんの首のカテーテルは抜いても痛くないよ。私もやってたからわかるんだ。」「あと、ここのベーコンポテトが美味しいよ。明後日出てくるから食べてみて。」「なんでも聞いてね。私ここに1年いるから、あー病院の中にローソン以外のコンビニ出来ないかな。私ファミマが好きなの。」
当然、質問する気はない。僕より一枚も二枚も上手だ。
次の日、彼女は小指程もない小さな折り鶴のストラップをくれた。
赤、青、黄、緑、紫、ピンク
「お兄さんはどれがいい?緑っぽいから緑あげるね、はい。」
僕は、緑を選ぼうとしていた最中だった。
んーー、、師匠!!
そう心の中で叫んだ。
安易な言葉かもしれないけど、辛いのは自分だけじゃない。むしろ、自分より辛い人はいっぱいいる。病院にいて得た感情が確かな物になった。きっとみんなそう思って笑顔でいるんだなって。会話が助け合いになるんだなって。
この病気になるまで、医者の事は全然信じてなかった。
自分の身体なんだから自分が一番わかるはずスタンスで。
でも、今回は自覚症状がなく気付いたら取り返しがついていない。
あの時にあーしてればという後悔はしないようにしてるが、今回の反省点は自分に関わる人達にはこれから口すっぱく伝えていこうと思う。
まずは、自分のデータを残しておく事。健康診断の検査結果が「健康」となればそれでいいじゃない。そこで何か見つかればもっといいじゃない。
僕は今までの健康にかまけて何も残してなかった。だから主治医も困っていた。
そして、腎生検の結果が出た。
透析 食事
あんなにピーピー言ってた食事の話なんだけど、
実は転院してから一回も食事を残していません!! 以前の病院の食事は2口くらいで残した時も多々あり、体重が一気に5kgくらい痩せちゃってかなり心配していた。
なのに、転院してから2kgも太った。
透析の空間にも少々慣れて来た頃。
その時間を持て余している透析中に看護師さんが声を掛けてくれた。
「今、何が不安ですか?」
腎生検の結果がまだ出てないのでなんとも質問しづらいが、とにかく退院した後の食事制限が気になっていると回答。
元々、痩せ型なのにこの入院でまた痩せちゃった。できればこれから太っていきたいのにリンやカリウム、あとは塩分を抑えなきゃいけないから、食事制限が強いられどんどん痩せていってしまうのでは?と不安。と嘆く。
「この世に食べちゃいけない物はない。と、私は患者さんにいつも伝えています。あと、水分で体重を増やすのではなくエネルギーを摂って肉を付けて下さい」
もちろん健常者に比べれば制限するのは必須。ただ、食べる物の成分を把握し、リンやカリウムが高い物を食べたらその分他の食事を抑えるように意識する。そして、なぜリンやカリウムを多く摂るといけないのかを理解することが重要。
・高カリウム血症・・・
体内のカリウム濃度が高くなると、電解質異常が起こり悪心や嘔吐、四肢麻痺、不整脈といった症状があらわれ最悪の場合、心停止や心筋梗塞となる。
・高リン血症・・・
体内のリン濃度が高くなると、血管石灰化が進み、心不全、足の懐死、骨粗鬆症となる。
どちらも自覚症状は見られずいきなり悪化する危険な病気。
いやあ、恐ろしや。
制限というより萎縮してしまう感じ。
食べるのが怖いなんて今まで思った事がなかった。
食べたい物食べて飲んで、気が向いたら体動かして、排泄。
この無情な自然行為が今は尊い。
前の病院の先生からは高カリウム血症の例え話として、
「一気にメロン半個食べたら死にます。」
ドヤっ
と言われた。
一瞬そのドヤ顔に、ギョエ〜!!ってなったがよーく考えたらこの30年間でメロンを一気に半個食べる程セレブリティなポテンシャルは持ってなく、これからもそんな機会はないだろうと心の中でtweetした。
看護師さんも言っていた。
「私達は患者さんを脅かす事も仕事のうち。元から甘めにしちゃうと患者さんも気が緩むから。」
そりゃそうだ 。と心の中でtweet。
今は色々とネットで調べた情報を、実際に先生や看護師に聞いて答え合わせしてる。
人間の体って面白い事に、
例えば塩分を◯g摂取すると、その塩分濃度を薄めるために水分を◯g摂るようにと決まって脳から指令が出るんだと。
そうすると、水分は血液に流れるので摂った分だけ血管が広がり血圧が上がる。
それが、塩分を摂りすぎると血圧が上がる仕組みなんだと。
なるほど、これって一般常識?
いや、大抵の健常者なら絶対そこまで知らないハズ。
当然かもだけど、この病気になってから自分の体を知る機会が増えたし自ら知ろうとしている。そして、いかに健康が大事かを身を持って体験中。
リンの話に戻すけど、僕は人並みにコーヒーが好き。カフェイン中毒とはいかないけど出来るなら今後も飲んでいきたい。
なんとなく、コーヒーは体に良くないから腎臓にも良くないんじゃ、、と半ば諦めムードで調べた所意外にイケル。
でも、缶コーヒーやインスタントには乳化剤が含まれていてそれがリンにあたるみたい。ドリップコーヒーだとリンが除去されるからOK。
コーヒーの事を考えてたらこんな事を思い出した。
それは、入院する2ヶ月前くらいの事。
よく職場で息抜きにインスタントコーヒーをブラックで飲んでたんだけど、ある時からそのブラックが「しいたけ」の味がするようになった。毎回ではなかったが、最初は薄めにしすぎたかな?と軽く思ってたが濃くしても味は変わらずしいたけ。マグカップももちろん綺麗に洗ってるので不思議な現象だった。
今思えばですよ。
あれはきっと味覚障害だったんですよ。
尿毒症の症状の中に味覚障害は含まれているんですよ。
そんな事考えると、もしかして転院して病院食を残さなくなったのも実は味覚が戻ってきて美味しく感じているのかも。。
アンビリーバボー
ですよ。
そして、恐る恐るこの入院中にドリップコーヒーを飲んでみたんです。(本当はダメきっと)
苦味の中にほのかに感じる酸味。
うまい。
そうそうこれこれ!
コーヒー万歳!!
しいたけの味は一切なし。
そんなこんなでこのブログを読んでる皆様、コーヒーに限らず何かを飲んでてしいたけの味がしたら危険なサインかも!!
ですよ。
腎移植
ここいらで僕の家族構成とエピソードををご紹介。
両親ともに健在で、8歳上の姉がいる。
まずは、父親。
前述の噂の折り鶴の父だ。
性格はせっかちで正義感が強くお節介焼き血液型はA型。本当にこの人の血を継いでいるのか?と疑うくらい性格は僕と違う。家族自体、海外旅行が好きで小学生の夏休みは毎年どこかに行ってた。
印象的だったのは、スペインのスリとバリ島のケチャとオーストラリアのウォンバット。あとはピースボートで世界一周。
幼心に自分は日本人で、世界にはいろんな肌の色と目の色があってそれによって文化と考え方がある。自分のいる日本は本当に小さいピースの一つなんだという一つの悟りを小学生で開いていた。
今思うとピースボートの旅行期間は2ヶ月以上。夏休み期間を優に越していて、10月手前に学校に合流していた。
いじめられてなくて良かったと今更安堵。
その父は今は、フィリピンに住んでてボランティアとしてフィリピン人に日本語を教えてる。時折、給料をもらってた時期もあるみたいだがお節介焼きの精神にそぐわないのか結局はボランティア。
日本人がリタイアしてフィリピンに移住してのんびり暮らすという話は珍しくないが、そこから日本語を教えてる人はあんまりいないんじゃないかな?純粋にすごいと思う。
フィリピンの学生さんは勉強熱心で出稼ぎのために日本語を覚えたいという人が多いんだって。
僕も小学生の頃はよく連れてかれた記憶がある。お湯の出ないシャワーで家中にヤモリがびっしり。ご飯は左手で食べるのが基本でマニラの市街地は排気ガスだらけ。でもそこにいる人達はいつも笑顔でハグをしてくる。同い年くらいの女の子はすでにピアスをしていて全然自分より大人っぽく見えた。ピアスするのはお洒落というよりかは魔除けを込めた風習なのだと。
今でも父がフィリピンに惹かれている何かは良くわかってないが、その風土が合っているんだと。
その影響なのか縁なのか、僕の新婚旅行はフィリピンのエルニドという秘境を選んだ。せっかくだからエルニドに向かう前に一度マニラで会わないか?と提案したんだが「マニラはヤダ」とあっさり拒否。笑 なんとマイペースな人だと笑ったのを覚えている。
面と向かっては言えないが、結構尊敬している。
母親は元保育士。
性格はこれでもか!というくらいおっとりしていてマイペース。でも、実はかなりこだわりがあって頑固。伝えたい事はやんわりとだが確実に主張してくる。僕はたぶん母親の血が強い。血液型はO型。
いつもニコニコしていて怒ったところをほとんど見たことがない。かといって八方美人ではなく、基本的にマイペース。
僕に対してもアドバイスはくれるが強制は絶対にしない。怒られる事もほとんどないんだがそれが逆に僕にとっての反抗期の抑止力になっていた。厳しくないが甘くもなくある意味、怒らないしつけのパイオニアだと息子ながら感心している。
中学生の頃、親の職場を見てみようというキャンペーンがあって母の保育園に行った事がある。こそばゆい恥ずかしさはあったものの、そこでシャキシャキ働く母の姿に感銘を受け一時は保育士になりたいと思ったくらいの衝撃を受けた。
僕の20代はバリバリ無休で働いてたもんだから、年に2〜3回実家に帰ってちょろっと話す程度だったがこの入院期間によく見舞いに来てくれて話す機会も増えた。親より先に死ぬほど不幸者はいないというが、この入院を機に実感している。
姉も現在、保育士。O型。
今は両親共にリタイアしてるが、僕が学生の頃は共働きで8コ上の姉が母親代わりのように世話もしてくれた。そんなだからケンカをした事がない。ケンカというよりはしつけ。逆らう気も鼻から無いしそれがいいのかはわからないがわざわざケンカをする気がないのにする必要はない。
親戚からは、シャキシャキしっかり者姉さんとなよなよ甘えん坊のシャイBOYの構図で見られていた。
性格は完全に父親譲りで嫌がってるが本人も認めている。曲がった事が嫌いで、せっかちではないが物事をはっきりさせる。職業柄もあるかもだが凝り性で嫁とも相性が良さそうで仲良し。
なんだかんだ僕はシスコンかもしれない。笑
そんな姉様が今回、腎臓をくれるという話だ。父様もくれると言ってるが恐らく、多方面からみて姉様の腎臓が最有力候補。いよいよと絶対的に頭が上がらない。精神的にも肉体的にも恩恵を受けるわけだからこれはもう何も言えない。
もちろんまだ、腎生検の結果待ちなのでもしかしたら腎移植を避けられるかもしれないが最終的な救いとして移植が出来るという安心感が今の僕をここまでポジティブにしてくれているんだろう。
何度も言うが、腎臓は遡って補正ができない。唯一の改善策は、「腎移植」なのだ。移植をすれば、透析もないし食事制限もなくなる。ただ寿命まで合併症を抑える薬は飲み続けるがソンナノカンケーネー。
移植のドナー待ちは10年待ちはザラとの事で、肉親からの移植が最短で一番安全。
ただただ感謝、appreciateです。
とまあ、順風満帆な家族構成ですが自分も嫁と娘と幸せで平和な家庭を作りたいなというお話でした。